相続した実家を賃貸に出す前に確認すること
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導入
相続した実家を空き家のままにせず、賃貸に出したいと考える人は多い。しかし何から手を付けるべきか迷う場面が多くある。
実家を賃貸に出す前に、まず相続そのものの方針が固まっているかを確認する必要がある。相続放棄や限定承認を選ぶ余地がある場合、判断できる期間には限りがある。
さらに賃貸を始めると、家賃収入は不動産所得として扱われる。総収入金額と必要経費を正しく区分できないと、申告の場面でつまずく。
本記事は国税庁・国土交通省・裁判所が公開している一次情報のみをもとに、賃貸に出す前後で確認すべき点を整理する。具体的な賃貸借契約の進め方や入居者募集の実務は、一次情報に記載がないため本記事では扱わない。
結論:何をすればよいか
- 相続放棄・限定承認を検討する余地があるなら、熟慮期間内に方針を決める
- 判断に時間がかかる場合は、家庭裁判所へ期間伸長の申立てを検討する
- 賃貸に出す方針が固まったら、住宅確保要配慮者向け住宅として登録するかを自治体に確認する
- 家賃収入は不動産所得として、総収入金額から必要経費を差し引いて計算する
- 収入に含まれる項目(敷金・保証金の一部、更新料など)を見落とさず整理する
- 将来売却する可能性がある場合は、所有期間による税率の違いも把握しておく
必要なもの
相続の方針をまだ決めていない場合は、次の書類が必要になることがある(家庭裁判所への申立てを行う場合)。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 伸長を求める相続人の戸籍謄本
- 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(相続人の続柄により必要範囲が異なる)
賃貸を開始したあとの確定申告に向けては、次のものを準備しておく。
- 賃貸料収入、名義書換料、更新料などの入金記録
- 敷金・保証金のうち返還を要しないものが発生した場合の記録
- 固定資産税の納税通知書・領収書
- 損害保険料の証書
- 修繕費の領収書
- 減価償却費を計算するための建物の取得費・耐用年数に関する資料
住宅確保要配慮者向け住宅として登録するかを検討する場合、登録申請に必要な書類は住宅のある都道府県等(政令市・中核市の場合は市)に確認する。
手順
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相続の方針を確定する(単純承認・限定承認・相続放棄) ここでのつまずき:自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に判断する必要がある。この期間を過ぎると単純承認とみなされる可能性があるため、判断に迷う場合は早めに動く。
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判断に時間がかかる場合、家庭裁判所へ期間伸長を申し立てる ここでのつまずき:申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所。申立人が相続人本人か利害関係人かで必要な添付書類が変わる。戸籍謄本の収集に時間がかかり、期限ぎりぎりになりやすい。
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相続方針が固まったら、賃貸に出す前提を整理する ここでのつまずき:本記事の一次情報には、相続登記や賃貸借契約そのものの具体的手続きは含まれていない。この段階で登記や契約に関する疑問が出た場合は、法務局や不動産会社、専門家へ別途確認する必要がある。
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住宅確保要配慮者向け住宅(セーフティネット登録住宅)として登録するかを検討する ここでのつまずき:登録先は住宅のある都道府県等(政令市・中核市の場合は市)。登録の可否や基準の詳細は自治体ごとに異なるため、自己判断せず窓口に確認する。
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賃貸開始後、総収入金額に含まれる項目を漏れなく把握する ここでのつまずき:賃貸料収入だけでなく、名義書換料、承諾料、更新料、頭金、敷金・保証金のうち返還を要しないもの、共益費名目で受け取る電気代・水道代・掃除代なども総収入金額に含まれる。ここを見落とすと申告漏れにつながる。
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必要経費になる項目を記録・整理する ここでのつまずき:必要経費とできるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるもの。固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が主な対象になる。生活費と混同したまま計上すると、後で経費として認められない可能性がある。
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確定申告の準備をし、期限内に提出する ここでのつまずき:不動産所得の金額は「総収入金額-必要経費」で計算する。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、画面の案内に沿って入力するだけで申告書や付表・明細書が自動作成される仕組みがある。ただし入力の元になる収入・経費の記録が不正確だと、作成された申告書の内容も不正確になる。
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将来、売却も選択肢に入れる場合は所有期間による税率差を確認しておく ここでのつまずき:譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり、税額は課税短期譲渡所得金額の30%(住民税9%、別途復興特別所得税)で計算される。長期譲渡所得との税率差が大きいため、賃貸を続けるか売却するかの判断に影響する場合がある。
よくあるつまずきと対処
熟慮期間の3か月をうっかり過ぎてしまう 相続財産の調査に時間がかかり、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれにするか決めきれないまま期限を迎えるケースがある。決めきれない場合は、期限内に家庭裁判所へ期間伸長を申し立てられる仕組みがある。申立ての要否や可否は、個別の事情により判断が分かれるため、家庭裁判所や専門家に必ず確認する。
敷金・保証金の扱いを誤り、申告漏れが発生する 退去時に返還しない敷金・保証金は総収入金額に含まれる。「預り金だから収入ではない」と思い込み、計上を忘れる例がある。返還の有無が確定した時点で、収入として計上する必要があるかを税務署や税理士に確認する。
修繕費と減価償却の区分を誤る 修繕費として全額を経費計上したものが、実際には資本的支出として減価償却の対象になる場合がある。この区分の判断は個別の工事内容によって変わるため、断定せず税務署や税理士に確認したうえで処理する。
住宅セーフティネット登録の要件を自己判断してしまう 住宅確保要配慮者向け住宅としての登録は、登録基準や手続きが都道府県等(政令市・中核市の場合は市)ごとに運用される。自己判断で「登録できる/できない」と決めず、住宅のある自治体の窓口に直接確認する。
売却のタイミングで税負担が大きく変わることに気づかない 賃貸を続けるか、途中で売却に切り替えるかを検討する際、所有期間5年以下だと税率が高くなる点を見落としがちである。売却を視野に入れる場合は、所有期間の起算日を含めて早めに確認しておく。
提出・完了後の確認
- 家庭裁判所へ期間伸長を申し立てた場合は、裁判所から届く審判書の内容で結果を確認する。
- 住宅セーフティネット登録住宅として登録申請した場合は、登録の可否や完了の通知方法を申請先の都道府県等(政令市・中核市の場合は市)に確認する。
- 確定申告書を提出した場合は、書面提出なら控えへの収受印、e-Taxで提出した場合は受信通知で、提出が完了したことを確認する。
- 提出後に収入・経費の記載漏れに気づいた場合の訂正方法についても、税務署へ確認する。
制度や手順は変更されることがあります。実行前に必ず提供元の公式情報をご確認ください。
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相続した実家を賃貸に出す前チェックリスト&申告準備シート
相続方針の確定から賃貸開始後の確定申告準備までの確認項目をチェックリスト化し、収入・経費の記入例を添付。記事を読んだ後の作業を、書類収集と記入の抜け漏れ防止に絞って進められる。
ここまでの手順を、そのまま実行できる形にしたものです。チェックリストと記入例が入っています(相続した実家-賃貸に出す-手続き.xlsx, 相続した実家-賃貸に出す-手続き.pdf)。
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出典
- No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁(確認日 2026-09-30)
- No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁(確認日 2026-09-30)
- 法務省:土地家屋調査士法第3条第2項第2号の法務大臣の認定(令和6年3月11日付け)について(確認日 2026-09-30)
- 住宅:住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~ - 国土交通省(確認日 2026-09-30)
- 相続の承認又は放棄の期間の伸長 | 裁判所(確認日 2026-09-30)
- 建設産業・不動産業:専門工事業等 - 国土交通省(確認日 2026-09-30)
制度や手順は変更されることがあります。実行前に必ず提供元の公式情報をご確認ください。